蔵象学説⑥~三焦および奇恒の腑

三焦と奇恒の腑
三焦とは腑のひとつです。表裏関係をなす臓はありません。奇恒の腑は、胆・脈・脳・骨・髄・女子胞を指します。
奇恒の腑は、働きは五臓に似ていて形体は六腑に近いとされています。関係の深い臓器はありますが、胆以外には、相関関係や表裏関係を表すものはありません。
三焦の役割と働き
三焦は実質的な形態については様々な概念があり、胸から腹部に全域のこと、または腸間膜や大網膜、小網膜などの組織ととらえる見方もあります。実質的な「臓器」としての在り方は不明瞭ですが、働きとしては気と水液の運行通路としてとらえられています。
一般的には、上焦・中焦・下焦の三つに分かれていて、それぞれに働きがあるとされています。
上焦……心・肺を含みます。気の昇発、水穀精微(飲食物から作られた栄養やエネルギー)を隅々まで行き渡らせます。
中焦……肝・胆・脾・胃を含みます。飲食物を消化吸収し、気血を作りだします。
下焦……小腸・大腸・腎・膀胱を含みます。排泄の役割を担います。
奇恒の腑の役割と働き
胆……奇恒の府の中で唯一、肝と表裏の関係にあります。詳しくは【肝・胆】の項目にて記載しています。
脈……血管のこと。その働きは【心・小腸】の項目にて記載しています。
脳……髄が集まるところとされ、髄の海ともいわれます。元神の府とも呼ばれ、意識や精神とも関係が深いとされています。
骨……骨も脳と同じく、髄に養われています。骨は体を支えたり、運動を支えたりする働きがあります。
髄……気血などと同じく体にとって必要な要素です。腎精から生成され、頭部に集まって脳になり、骨を作ったり、血を作ったりします。腎精が充実し、それらも満たされれば骨余である「歯」、血余である「髪」もツヤがあり美しいものとなります。腎精については【腎・膀胱】の項目にて記載しています。
女子胞……子宮のことです。腎・肝とかかわりが深く、腎精により発育します。主に月経を司る働きと、妊娠を司る働きがあります。月経がはじまると、生殖能力を持つようになり、妊娠すれば、女子胞は胎児を育てるところとなります。
女子胞は経脈の衝脈・任脈に通じていて、その働きにより月経の発来・調節・受胎・生育の影響を受けています。
まとめ
以上が【三焦および奇恒の腑】の働きになります。その他の臓腑はこちらを参考にしてください。