蔵象学説⑤~腎・膀胱~

中医薬膳の基本

腎の役割と働き

 

中医学では【腎】は、作強(全身のエネルギー源)の官、先天の本(精)、封臓(封じる性質がある臓器)と言われます。先天の本とは先天的なエネルギーや栄養の元、生命の根源、陰陽の始まりです。新しい生命は先天の本(精)をすでに有し生まれてきます。

腎の主な働きは、「腎精を司る」「生長・発育・生殖を司る」「水を司る」「納気を司る」とされます。西洋医学的な「腎臓」の役割の他にも、腎精がかかわる機能や生殖機能といった働きが「腎」の機能になります。

 

腎精を司るとは?

 

  • 腎精を司る……先天の本(精)と脾胃から作られた後天の本(精)が合わさったものを腎精と言い、腎の中に蓄えられています。腎精は腎陽と腎陰を生み出します。腎陽は臓腑や器官を温める、物質を作り出す、それぞれの働きを推動させる全身の陽気の元となり、腎陰は全身を滋養し、潤いを与える陰液の元となります。

 

生長・発育・生殖を司るとは?

 

  • 生長・発育・生殖を促進する……腎の精気の盛衰は生長、発育、生殖に深くかかわります。黄帝内経では女性は7の倍数・男性は8の倍数で年を重ねるとされます。
    人は幼年期から、次第に腎中の精気が満ちてきて、生長・発育を続け青年期には充実した精気から天癸(性腺刺激ホルモンの意味を含む物質を指す用語)が生まれ、生殖が可能になり一定期間、生殖能力を保ち続けます。
    生命の充実期は女性28歳・男性32歳頃。その後生長・発育・生殖能力は次第に衰えはじめます。生殖期間はおおよそ女性49歳・男性56歳くらいとされています(個人差があります)。

 

水を司るとは?

 

  • 水液代謝を受け持つ……腎の気化作用(物質を変化させる作用)により、全体の津液の代謝バランスを司ります。肺・脾・三焦・膀胱などの臓器もそれぞれに津液の運行に関わりますが、最終的に全身のバランスをとっているのが腎の陽気の作用なのです。
    それにより、必要なものは気・血・津液・精などに変化し体内で利用され、体内で利用できないものは汗・尿・便などにして排泄します。

 

納気を司るとは?

 

  • 吸気を納める……納気とは吸い込んだ吸気を腎に下ろす働きのことです。呼吸は本来、肺が行いますが、吸気に関しては腎気の力も必要とされます。腎まで吸気が納めることができると深い呼吸となります。

膀胱の役割と働き

 

膀胱には尿をためる働きと、排尿の働きがあります。

  • 貯尿と排泄……膀胱に尿をため、排泄する働きです。体内に必要のない水分である尿を膀胱に蓄積させます。必要があれば、そこから水分の再吸収が行われますが、必要とされなくなったものは最終的に排泄されます。

 

陰陽五行学説と腎・膀胱

 

陰陽五行学説では、腎は「水」に属します。「水」は、「骨」「髪」「二陰・耳」「唾」「恐・驚」と関係が深いとされています。

「骨」は髄から生まれ、髄は腎精から生まれるとされています。髄は脳ともつながっています。歯は骨の余りとも言われ、骨が充分に養われていると歯も健康に保たれます。

「髪」は血余とも言われ、血が充実しているとつやもあり量も豊かになります。血が精より作られるため、腎精が充実していると髪も充実するのです。

二陰とは、排尿器官・生殖器、肛門の事。腎精が充実すると耳もよく聞こえ・生殖器も充実し、排尿や通便時に関わる開閉の機能もスムーズです。

「唾」も腎精の作用により化生され、よく働くと消化を助ける働きをします。

中医学では感情も、分類されています。腎に対応するのは「恐・驚」。恐さも驚きも腎を傷めます。

 

 

まとめ

以上が【腎・膀胱】の働きになります。その他の臓腑はこちらを参考にしてください。

⇒【蔵象学説とは?】

⇒【肝・胆】

⇒【心・小腸】

⇒【脾・胃】

⇒【肺・大腸】

⇒【三焦および奇恒の腑

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