蔵象学説④~肺・大腸~

中医薬膳の基本
肺の役割と働き
中医学では【肺】は臓器の中で最も高い位置にあります。心の補佐をするため相輔の官、またはデリケートでか弱さを示す嬌臓(嫩臓)とも呼ばれます。鼻や気管支を通して暑さや寒さ・外気と直接触れる肺は、敏感でその影響を受けやすい臓器でもあるからです。
性質としては乾燥を嫌い、潤うことを好みます。肺の働きは「呼吸と気を司る」「宣発と粛降を司る」「百脈を朝(あつ)め治節を司る」働きがあります。
肺の呼吸と気を司る働き
- 呼吸を司る……呼気により濁気を排出し、吸気により清気を取り入れます。これにより、気の生成と昇降出入が調節されます。
- 全身の気を司る……呼吸で得られた清気と脾から送られてきた水穀精微(飲食物をもとにした栄養物質)が合わさった気を全身に巡らせます。
宣発と粛降を司る働き
- 宣発……肺気の上向き、体表に向いた作用の事です。体内の濁気を排出し、脾から送られる水穀精微(飲食物をもとにした栄養物質)と津液を全身に送り出し、皮膚に到達させる役割があります。発汗を調整する機能もあります。
- 粛降……肺気の下向き、体内に向く作用のことです。清気を吸入し、水穀精微(飲食物をもとにした栄養物質)や津液を下に送り出します。
- 通条水道……宣発と粛降の共同の働きにより、臓腑や各器官への津液の流れを調整しています。肺は水の上源とも呼ばれます。
百脈を朝(あつ)め治節を司るとは
- 百脈を朝(あつ)める……全身の血脈は肺に集まり、気体交換をします。呼吸と気の推動機能に支えられた血の運行に関わります。その血は全身へ運行されるため、肺は全身の気を司るとされています。(全身の経絡を潮の満ち引きのように波打たせ気血を行き渡らせるという解釈もあります。)
- 治節を司る……呼吸、気の昇降出入、血液の運行、津液の輸布や排出といった、生理機能を管理調節しています。
大腸の役割と働き
大腸には「水分の再吸収」と「糟粕の伝化」の働きがあります。
- 水分の再吸収……大腸では小腸から送られた糟粕(かす)から、水分を再吸収します。水分の再吸収が弱いと下痢に、大腸に熱がこもり再吸収が過剰になると便秘になります。
- 糟粕の伝化……伝化とは伝道変化のことです。糟粕から水分を再吸収し、糞便を形成します。形成された糞便は肛門から排泄されます。排便の過程は、肺気・脾気・胃気・腎気ともかかわりが深いとされます。
陰陽五行学説と肺・大腸
陰陽五行学説では、肺は「金」に属します。「金」は、「皮膚」「皮毛」「鼻」「涕」「悲・憂」と関係が深いとされています。「皮膚」「皮毛」は肺の宣発・粛降により養われるため、それが十分到達していると皮膚や皮毛は状態が良いとされます。また、肺は「鼻」ともつながっていて、肺が不調であれば、鼻づまり、「涕(鼻水)」くしゃみなどの症状が出やすくなります。
中医学では感情も分類されています。肺に対応するのは「悲・憂」。金の季節である秋になると何となく物悲しくセンチメンタルになることがあります。大きな憂いや悲しみは気を弱め、肺の働きも損傷しやすくなります。
まとめ
以上が【肺・大腸】の働きになります。その他の臓腑はこちらを参考にしてください。
⇒【蔵象学説とは?】