蔵象学説③~脾・胃~

中医薬膳の基本

脾の役割と働き

 

中医学では【脾】は気血生化の源、「後天の本(精)」ともいわれます。生命を維持するためのエネルギーや栄養を作り出すからです。

その働きは「運化を司る」「統血を司る」とされています。運化とは、食べたものを消化吸収し体全体に運ぶという意味です。統血とは血を脈の外に出さないという意味です。脾は乾燥を好み、湿度を嫌う性質があります。

 

運化を司るとは?

 

  • 水穀の運化……飲食物を消化吸収し得られたエネルギー(水穀精微)を、体全体へ運ぶという働きがあります。消化吸収にはいくつもの臓腑が関係しますが、いずれも脾の運化の働きに依存しています。脾が元気であれば他の臓腑もしっかり働き、運化がしっかりされれば五臓六腑・四肢百骸・経絡・皮毛筋肉を養うことができるとされています。
  • 水液の運化……脾には水液を運ぶ働きもあります。飲食物を消化吸収し、運ぶ際、必要な水液も同様に運ばれていきます。これも脾の運化の作用に依存しています。余分な水は肺や腎に送られ、その後、汗や尿として排出されます。
  • 昇清……脾の気は上昇の作用があります。それを受けて、消化吸収で得られたエネルギーを身体の上部である肺・心・脳(頭・顔)に送ることができます。また、脾の昇清作用は内臓の位置を安定させ、その位置が下がらないように保つ働きもあります。

 

統血を司るとは?

 

統血を司る……血が脈の外に出ないようにするということです。血に対する固摂の作用もあるのです。脾気が弱ると皮下出血や血尿などが起こる場合があります。

 

胃の役割と働き

 

胃は、「水穀の受納・腐熟を司る」「通降を司る」働きがあります。胃は、「水穀の海」「太倉(大きな倉)」ともいわれます。湿を好み、乾燥を嫌う性質があります。

  • 水穀の受納・腐熟を司る……水穀は飲食物、受納とは飲食物を口から受け取って胃に納めるという意味です。腐熟とは胃が行う最初の消化で、泥状にして小腸に送ります。この消化のことを腐熟と言います。
  • 通降を司る……通降とは通じて降ろすの意味です。胃気は、下降する特徴があり腐熟したものを小腸・大腸へ送り、不必要なものを排出へ導きます。

 

陰陽五行学説と脾・胃

 

陰陽五行学説では、脾は「土」に属します。

「土」は、「四肢・筋肉(肌肉)」「唇」「口」「涎」「思」と関係が深いとされています。「四肢・筋肉(肌肉)」は脾の運化により養われます。脾胃が良く働けば、四肢・筋肉(肌肉)も状態が良いのです。

「口」は脾胃の入り口で状態が良い場合は食欲があり、味覚も正常です。口の周りの「唇」は気血が充実していると、色つやも良いとされます。脾が気血生化の源だからです。口と関係の深い「涎」も脾と関係があります。唾液には、粘度が低いサラサラした「涎」、粘度が高いものは「唾」とされており脾と関係が深い方は「涎」です。口腔内を潤し消化を促進します。

中医学では感情も、分類されています。脾に対応するのは「思」。思考・思慮も行き過ぎると、脾の作用を弱め食欲不振や胃腸の不快感が表れます。

まとめ

 

以上が【脾・胃】の働きになります。脾の上昇・乾燥を好む性質と、胃の下降・湿を好む性質、一見、あい反する性質ですが、このバランスがあってこそ一連の消化吸収、運化の作用が正常に働くのです。

 

その他の臓腑はこちらを参考にしてください。

 

⇒【蔵象学説とは?】

⇒【肝・胆】

⇒【心・小腸】

⇒【肺・大腸】

⇒【腎・膀胱】

⇒【三焦および奇恒の腑】

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