蔵象学説①~肝・胆~

中医薬膳の基本
肝の役割と働き
中医学では【肝】は将軍の官と呼ばれており、伸びやかなことを好み、気の運行に重要な働きをしています。
その働きは、大きくふたつあり、「疏泄を司る」と「造血を司る」とされています。疏泄とは、疏通・発散・上昇・下降といった全身の気の流れのことです。
気の流れのことを気機と言います。
肝の疏泄の働き
- 気血・臓腑の働きの安定(気機の調節)……気血(津液も含む)の流れは、「気が巡れば血もめぐる」という原理があります。気機の異常は、気そのものの流れの異常および血や津液を巡らせる力にも影響するため様々な不調が現れます。また各臓腑の働きも気が影響を与えているため、その働きにも異常(不調)が出てしまいます。
- 精神・情緒の安定(情志の調節)……人間の精神活動の支えとなっているのも「気」の働きです。疏泄がうまくいき気機が安定していれば精神は安定し、性格も明るくリラックスした状態が保てます。肝気の異常は悩みが多くなる、イライラする、怒りっぽくなる場合もあります。
- 消化・吸収の促進……消化吸収の要である「脾と胃」(まとめて脾胃と呼ぶことが多い)。その働きを肝気は助けています。しかし肝気の疏泄が不調になると、「脾胃」の働きも不調になってしまいます。また、胆汁の分泌・排泄にも影響するため黄疸や消化不良につながることもあります。
- 女性の生理機能・男性の生理機能……肝は女性の子宮や男性の睾丸と経絡を通じつながっているとされています。肝の疏泄の不調は女性の月経や妊娠、出産の異常・男性の射精の異常につながります。
肝の蔵血を司る働き
- 血液を貯蔵する……肝は血を貯蔵する働きがあります。安静時には血を肝の中に貯蔵し、運動をするときはたくさんの血を必要とするため、そこから送られると考えられています。
肝気は陽、対して肝血は陰の関係でもあります。(陰陽について)血が十分にあることで肝の陽気の上がりすぎを防ぐことができます。
蔵血の不調は、肝陽上亢による出血、女性の月経の不調、身体の栄養不足による不調を招きやすくなります。 - 血量の調整……蔵血をつかさどる肝は同時に血量の調整もします。必要な時に必要な量の血液を各器官へ送る働きです。
胆の役割と働き
胆は、「決断を司る」「胆汁の貯蔵と分泌」の働きがあります。
- 決断を司る……胆は神(精神や意識)と関係が深いとされています。そのため、胆が充実していれば、素早く決断することができ物事に動じないとされ、精神・情緒が安定します。
- 胆汁の貯蔵と分泌……肝気の疏泄により胆汁が作られ、貯蔵され、分泌されます。消化機能を促進します。
陰陽五行学説と肝・胆
陰陽五行学説では、肝は「木」に属します。「木」は、「筋」「爪」「目」「涙」「怒」と関係が深いとされています。
「筋」は肝血の営養を必要とします。栄養が充分であると柔軟であり様々な運動ができると考えます。「爪」は「筋」の余りと言われ、筋の状態が良いと、「爪」もツヤがあり、肝血不足では、爪が割れたりツヤがなかったりします。また、肝は「目」ともつながっていて、肝が不調であれば、かすみや乾燥、視力低下を招くとされています。その「目」を潤す「涙」も肝と関係が深いです。
中医学では感情も、分類されています。肝に対応するのは「怒」。怒りが肝の疏泄を過剰にさせます。逆に肝の疏泄が過剰になると「怒」りがすぐに起こりやすくなったりします。「怒」りは肝を傷つけるとされています。
まとめ
以上が【肝・胆】の働きになります。その他の臓腑は下記のリンクを参考にしてください。