陰陽五行学説②~五行学説~

中医学を学ぶときに基礎になる考え方です。中医学には様々な学説がありますが、そのうちの一つ「陰陽五行学説」について解説していきます。
陰陽五行学説とは?
中国には古代から陰陽学説と五行学説という考え方があります。ふたつをあわせて「陰陽五行学説」と呼ばれることが多い学説です。
これらは宇宙の真理や原理を表したもので古代中国人の自然観・宇宙観を表したものと言えます。ですから陰陽五行学説=中医学ではありません。ベースが陰陽五行学説でその哲学が基礎となり風水、易等が発展しているのです。
そして、それが中医学に応用されたときに、「人体」の各臓器や体を構成する様々な要素が(相対的に)陰陽どちらに分けられるか、五行のどこにカテゴライズされ他の臓器や器官と関係をなしているか見ることができ、それを用いて予防や診断、治療に役立てているのです。
解説!五行学説
五行学説の考え方として、世界は5つの性質をもつものから成ると考えられていました。言い換えればすべての物は5つの中のどれかの性質を持つということです。それは、
「木・火・土・金・水」(もく・か・ど・こん・すい)
という分け方をされます。この5つが相互に影響しあいながら、世界が回っていると考えられていたのです。「木・火・土・金・水」(もく・か・ど・こん・すい)というのは、各項目の作用や性質、特徴を象徴するものです。性質と特徴を一部、ご紹介します。
木…曲直 伸びる・昇発
火…炎上 温熱・上昇
土…稼穡 生化・受容
金…従革 粛降・収斂
水…潤下 滋潤・下降
中医学や薬膳においても、味(四気五味)や季節(春・梅雨・夏・秋・冬)、五臓六腑(蔵象学説)に深くかかわってくる考え方になります。それらの中でも中医学に関係の深い部分を五行の表としてまとめてありますので、詳しく知りたい方は別添のPDF⇒五行色体表をご覧ください。
これらの5つに分類された性質の関係性を表した図が、陰陽五行の図になります。
五行の関係性
5つの性質は互いに、関係性を保ちながらバランスをとっています。バランスを失ってしまうと人間は病気になります。まずは正常な関係性である、相生と相克を説明していきましょう。
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相生
促進や生長を示す関係です。相生とは木が火を生み、火が土を生み、土が金を生み、金が水を生み、水が木を生む(木が燃え火が起き、火が燃えた後には灰(土)ができ、土の中で金属は発生し、金鉱のそばに水は流れる、水を吸い木は生長する)ことを表したものです。五行の図で言えば直線の矢印で引いた部分になります。母子関係ともいわれる関係です。
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相剋
相克とも書きます。それぞれ、制約、抑制を示す関係です。相剋は、木は土を剋し、火は金を剋し、土は水を剋し、金は木を剋し、水は火を剋す(木は土砂崩れを防ぎ、火は金属を溶かし、土は水をせきとめ、金属の斧は木を切り倒し、水は火を消す)ことを表します。五行の図で言えば点線の矢印で引いた部分になります。祖孫関係ともいわれる関係です。
相生と相克が促進・生長・制約・抑制という性質を持って、バランスよく物事が進んだ状態が「調和」と言えるでしょう。以下の相乗・相侮は、はバランスが壊れてしまった状態をいいます。
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相乗
②の相剋が必要以上に過剰になることです。相乗は、抑える側(矢印の元になる方)が強すぎるまたは抑えられる側(矢印が示す先)が弱すぎることで起こります。木を植えすぎると土が足りず、火が強すぎると金属は跡形もなく溶ける、多すぎる土は水を吸っても乾燥は消えず、金属の斧が増えれば切り倒される木も増える、多すぎる水は火を消してしまう、となります。「水が火を消す」に関しては、相剋と同じ表現ですが、例えばマッチの火を消すとした場合、スプーン一杯程度の水があれば消えたとします。そのために必要な分の水量を使って消すのが相剋、どんぶりいっぱいの水をかけて消そうとするのが相乗です。
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相侮
②の相剋の矢印の向きが変わります。反剋とも言います。本来ならば木→土、火→金、土→水、金→木、水→火となりますが、木←土、火←金、土←水、金←木、水←火となるのです。これは抑えられる側だった方が強すぎる、または抑える側だった方が弱すぎる場合です。木は痩せている土地では育たない、少ない火では多くの金属は溶かせない、土は大量の水に流される、ぼろぼろの金属の斧では固い木は切れない、少ない水は火で蒸発される、といった具合です。
以上が、陰陽五行学説の中の五行学説についての解説になります。
陰陽学説については【陰陽五行学説①~陰陽学説~】で説明しています。また、五行の関係の深い、味(四気五味)や季節の養生(春・梅雨・夏・秋・冬)、五臓六腑(蔵象学説)については、別項目で解説しています。